『経験が人をつなぐ、支える。』
夏休み、学校祭が終わり、いよいよ受験勉強に集中したいこの時期ですが、受験生からはいろんな悩みや不安を聞きます。
「志望校をどこにしたらいいのか?併願校はどうしようか?」
「大学受験では、皆どれくらいの数を受験するのか?」
「模試の偏差値が伸び悩んでいる。判定が低い。志望校はこのままでいいのか?」
このように、不安だけでなく疑問もどんどん出てくるのです。
西日暮里校の、高校3年生のMさんもその1人でした。
9月の終わり、教室に入ってくるMさんの顔は、いつもと様子が違いました。私は、授業の直前でしたが気になり、Mさんに声をかけてみたのです。
「どうした?何かあった?」
Mさんがそっと顔を上げると、ちょうど私と目が合いました。
「え?なんで……何でわか……るんですか?」
最後まで言い終わらない内に、Mさんの目にどんどん涙が溜まっていくのがわかりました。私はそのまま面談室に彼女を誘導しました。本来ならゆっくり話を聞きたいところですが、後3分ほどで私の授業が始まってしまいます。一瞬考えた後、涙を流し始めた彼女に言いました。
「まず座って・・・。ゆっくり話を聞きたいけど、私は授業があるから、今から教務の猪早先生を呼ぶね。猪早先生にゆっくり話を聞いてもらおうと考えているけど、その前に少しだけ話を聞かせて」
「あの、いえ、そんな大事ではないんですけど。クラスに指定校推薦で合格が決まった生徒がいて、喜んでいて。自分には関係ないとわかっているんですけど、それでも・・・いいなぁって想いが出てきて、それで、自分が、その・・・落ちたらどうしようとか考えてしまって・・・。わかっているんですけど・・・弱くてすいません」
「そうか、そうだったんだね。・・・うん、やっぱり猪早先生を呼ぶよ。知っていると思うけど、猪早先生も、去年大学受験で、同じような想いをしているから、今のMさんの気持ちがものすごくわかると思う。どうやってこういう時期を過ごして、乗り越えていったか、聞いてみるといいと思うよ」
「わかりました。お願いします」
カウンターの仕事をしていた猪早先生に声をかけ、事情を説明して面談室に入ってもらいました。
※昨年度の合格体験記をご覧になった方ならご存知かもしれませんが、猪早先生は、稲門で大学受験をした元生徒なのです。今は西日暮里校で教務スタッフとして活躍してくれています。
詳細はこちらhttps://staging.weg.jp/voice/high/voice-1879/
最初はやはり、面談室からは元気のない声が聞こえていましたが、10分ほどすると笑い声が聞こえてくるくらいになりました。やがて2人の会話から、今のMさんの志望校の話や各科目の勉強法の話になり、特に日本史の部分では2人で盛り上がっていました。
面談室から出てきたMさんは随分落ち着いて見えましたが、まだどこかスッキリしないように見えました。私は休憩時間に猪早先生から話を聞くと、志望校の赤本の勉強法について、Mさんにまだ少し懸念があるようでした。
そこで猪早先生から提案があり、実際にMさんの志望大学志望学部に受かって、現在、西日暮里校で教師をやっている下平先生とMさんで話をさせるのはどうかということになりました。運よくその日は、下平先生も教室で指導をしていたのです。
私は下平先生に事情を説明し、今日の授業後に少し時間をもらえないかと依頼すると、快諾してくれました。こうして21時半の授業後、下平先生とMさんは、面談室で赤本の具体的な勉強について細かく話をしていました。受験期のメンタル面の会話も、猪早先生の時同様、盛り上がっていました。
帰り際、あいさつに来てくれたMさんの顔は、とてもスッキリしたように見えました。
もちろん今日だけの面談で、今後一切の不安が起きないとは言いません。おそらく今後も不安に押し潰れそうな時が来ると思います。その時はまた私が声をかけると約束しました。
Mさんを見送った後、猪早先生、下平先生と別々に話をしたのですが、2人とも同じことを言っていたのが印象的です。
「大学受験は本当に辛い。眠れなかったり、髪が抜けやすくなったり、お腹いたくなったり、本当に辛かった。でも、この辛い経験が、目の前のMさんを勇気付け、共感してもらえているのを見て、少しでも役に立てたようで、とても嬉しい」
2人とも、Mさんを勇気づけるだけでなく、自分自身がどこか救われているような感じを受けたのです。自分の辛かった経験が、そこから生まれる言葉が、目の前の生徒を勇気づけられるこの仕事は素敵だなと思うと同時に、その責任の重さを感じた夜でした。