『元気になるために』
あっという間に桜も終わってしまいましたが、稲門学舎西日暮里校でも新年度体制で授業が始まっています。新しい中学・高校に入学した生徒たちの色々な反応や、進級した生徒のちょっとしたボヤキなど、小さな変化がいたるところで起こる季節です。
でも、その変化に苦しむ生徒もいます。
高3になったAさんは、春期講習中、毎日塾で8時間以上の勉強をしていました。最終日に行ったセンター英語演習では、40点UPの成長ぶり。私は、Aさんがこのまま良い波に乗ってくれると考えていました
しかし、春期講習が終わって初めてのレギュラー授業にやってきたAさんの表情は明るくありません。むしろ暗いと言ってもよいくらいでした。声をかけてみると、
「思うように勉強が出来ない。」
ということでした。
「新学期が始まって、考えることがいろんなことがあって…。でも、やんなきゃいけない課題が出ていて、それが自分のために必要で、自分がそれをやるべきだってわかっていて、机には向かうけど、家では集中力が続かない…。」
この時期のよくある悩みです。私は単純に答えました。
「毎日塾においで。」
「え……。講習期間中みたいにですか?」
「うん。」
「え~と、私に拒否権あるんですか?」
「まぁないでしょうね(笑)。だって、Aさんは今のままだと元気ないままじゃないですか?」
「“元気ないんだったら塾に来い”ってことですか?」
「うん。人って、自分が『なりたい自分』に近づいていると感じられる時や、目標に向かって努力できているときは、自分の存在を力強く感じられるでしょ。簡単に言うと、少しだけ自分を好きになれるでしょ。勉強や努力を続けられると、良い結果も出るようになってきて、ますます喜びが出て、努力できている自分を褒めてあげられる。こういう素敵な循環が起きてくると、受験まで勉強を続けられるよ。だから、その循環がAさんの中で確立するまでは、毎日塾に来て努力するといいと先生は思う。」
「なるほど……和田先生の言っていることは正しい気がします。でも塾に来ると疲れるんですよね。」
「それは努力したからです。頑張った証拠です。ただ、その疲れと一緒にAさんは達成感を得ているはずだから、疲れを少し心地よく感じるはずだよ。」
「なんだか何を言っても、ポジティブに返ってきますね(笑)。
……わかりました。なんか言い包められている気がすっごいするんですけど、ちょっと元気出たので、とりあえずやってみます。」
Aさんは、諦めたように笑みを浮かべて自習席に向かいました。
その日は、3時間勉強した後、Aさんは4/27のセンタープレの目標点を告げて帰りました。
「疲れた~」と言いながらも、来た時より明るい表情でした。