『パニックを超えて』
皆様こんにちは!
今年の中学受験では、直前1週間前にインフルエンザになったり、緊張でなかなか眠れず試験中に眠ってしまったりと、いろんなエピソードを持った生徒がいて、本当にハラハラしました。中でも「彼の受験に関われて良かった」と感じられた生徒がいましたので、ご紹介させていただきます。
中学受験の1日目、第一志望を受けていたA君は13時半過ぎに教室にやってきました。
顔色は悪く、両手の指を胸の前で組みながら、別の件で電話中だった私を見つめています。私は、直接A君の国語を指導していたので、その様子から1日目の手ごたえがなかったことに気づきました。しかも相当厳しいようです。
電話を終えると、私はA君を席につかせ、4科目の手応えがそれぞれどうだったか聞きました。しかし、A君は私を困った顔で見つめるだけで、その口からは言葉が出てきません。
私は、もう一度尋ねました。
「まず、国語はどうだった?」
そうすると、みるみるA君の目がうるんでいきました。
「漢字とか、知識問題が全然わからなくて……。それでパニックになって、そこからは何も、お、覚えていません…。」
私は大きくゆっくり頷きながら、A君に話すことを頭の中で整理していました。
実は事前に、A君のお母さんと「A君が試験当日にパニック状態になるほど緊張するのではないか?」ということを相談していたのです。そして、そうなった時のために、2/1の14時から「A君との面談」という名目で予定を空けておきました。そこに予定より早くA君が来たというわけです。
当初私は、「知識問題の配点は1点だから、そこまで気にすることはなかったんだよ。」というような実戦的な話をする予定でしたが、A君の動揺の大きさを感じ、もっと根本の話をすることにしました。
「A君は今、何が怖いのか?何に恐怖をしているのか?」、「志望校の受験に落ちたらどうなるのか?」、「志望校に受かったら、どうなるのか?」、「お母さんが、受験を通してA君にどうなってほしいのか?」「明日をどんな気持ちで受験するのか?」
A君は少しずつ元気を取り戻し、2時間ほど勉強してから自宅に戻りました。
その数時間後、1日目の結果が出ました。本人も予想していた通りの不合格。
予想していたとはいえ、不合格の文字は私にも本人にもダメージを与えます。しかし、あの時、ゆっくり話を出来たので、もうA君を信じるのみでした。
2/2、「昨日よりは、かなり落ち着いて受験できたそうです。本人も落ち着いています。」という入試直後の連絡がありました。
そして、その数時間後、「合格しました!」という連絡をいただいたのです。
私は本当に嬉しく、またホッとしました。
事前にA君のお母さんから相談いただけていたこと、A君が私を信じて教室に来て話を聞いてくれたことに心から感謝しました。
A君のこれからの活躍に、心から期待しています。