『第一志望をめざして…。』
数年前のこの時期、私はある高校3年生の進路相談をしていました。私が彼女に志望校を聞いたところ、「私は早稲田大学に何としても合格したいのです。どんな勉強でもしますから!」と強い意志を語ってくれました。
運動部に入っていた彼女は、6月の引退試合の後に勉強に専念するという計画でした。つまり短期間の勝負です。入試科目のうち、英語と国語を稲門学舎で勉強し、得意な日本史は学校の選択授業で受験対策を行っていました。決して手を抜かず、必死に勉強していた彼女は、学校が早く終わると、2時過ぎには稲門の教室に来て、夜9時30分まで自習をしていました。早稲田に絶対合格するという強い気持ちが私にもひしひしと伝わってきました。
10月の模試では成績に変化が見られました。明治・中央・法政の判定は、BやC判定というレベルに達してきました。ただし、早稲田の判定は、合格にはほど遠いE判定。しかしこの結果が、さらに彼女に火を付けました。早稲田の過去問を授業で何度も何度もやりこみました。担当の教師は過去問の傾向を徹底的に分析し、綿密な学習プランを提示した上で、徹底的に演習を行いました。彼女の「気合」は入試直前まで弱まることはありませんでした。
入試が始まる2月。まずは押さえの大学から入試が始まりました。つまり早稲田より偏差値が低い学校からの受験でした。ところが、入試結果が出始めると私は動揺の連続でした。早稲田よりランクの低い大学に一向に合格できないのです。絶対に大丈夫だと思っていた押さえの大学にさえ合格することができませんでした。ただ、私の不安とは裏腹に、当の本人はケロッとしているのです。
そして、いよいよ早稲田の入試をむかえました。彼女は、私の不安とは裏腹に自信を持っていました。私は不安な思いを隠しながら、励ましの言葉をかけたことを覚えています。
そして…。彼女は見事に早稲田大学に合格してくれました。5校受験し、合格したのはなんと早稲田のみ。私は、不安を感じていた自分を恥ずかしく思いました。
今年も5月に入り、大学受験生の進路面談が始まりました。彼らの志望校を聞いていると、例年になく多くの受験生が早稲田を第一志望にしています。
彼女のことを思い出し、目標に強い意志をもって頑張っている受験生の志望校合格に向けて、私は全力でサポートしていく決意を新たにしました。