『時間を忘れて頑張れる人との出会い』
私が彼女に出会ったのは、彼女が高校3年生の冬、冬期特訓合宿でのことだった。高3のKさんにはどうしても合格したい大学があった。Kさんは志望大学合格を目指して、最後の追い込みのために合宿に参加していた。私が感じたKさんの第一印象は、物静かで大人しそう…。初めての合宿に少々戸惑いながら、不安そうな表情を浮かべているように見えた。果たして朝6時から夜10時までのハードな合宿にどれだけ耐えることができるだろうか…、私は少し不安に思いながらも、励ましの言葉をかけ、Kさんの様子を見守ることにした。
しかし、授業が始まると、Kさんの表情は一変した。目の前の分厚い問題集に、鋭い表情でとりくんでいた。今までの不安そうな表情は一切見せず、問題集に出てくる1問1問を、しっかり自分のものにできるように必死に戦っている表情に変わった。物静かではあるが、この合宿にかける意気込み・真剣さがひしひしと伝わってきた。理解できない問題があると、完全に理解できるまで何度も何度も先生に質問し、本当に納得がいくまで質問し続けていた。先生も彼女の意気込みに応えようと、いつの間にか彼女のペースに引き込まれ、熱い熱い授業が繰り広げられるようになっていた。
1日の最終授業は午後10時に終了し、あとは各個人の判断で深夜特訓をやることになっていた。翌日も朝6時から授業があることもあり、ほとんどの生徒は0時過ぎには自分の部屋に戻り、翌日に備え体を休めていた。しかしKさんは、いつも最後まで教室に残り、問題集の問題に取り組んでいた。深夜2時過ぎ、ついに最後の一人になると、まるで自分自身に気合を入れ直すかのように、部屋中に響き渡る大きな声をだしながら数学の証明問題を解いていた。私の第一印象からは想像もつかないほどの気合の入り方だった。そしてわからない問題は、翌日の6時からの授業で、先生に納得するまで質問し続けた。
「稲門学舎の先生は本当に親身で、情熱的で、どんな質問にも私がわかるまで何度でも解説をしてくれました。だから私は時間を忘れてがんばれたんです!」と、Kさんは言ってくれた。
春になり、Kさんは念願の大学生になった。入学式が終わり、私の元にも顔を出してくれた。挨拶もつかの間、Kさんは突然こう切り出した。
「実は私、稲門学舎で先生として教える仕事がしたいんです!採用の面接をお願いできませんか?」。
私はKさんの合宿の様子を思い出した。きっと彼女であれば、生徒たちにいい影響を与える教師になれるだろう…。その場で、通常通りの面接・適正テスト・指導教科のテストを行った。面接では、相変わらず彼女の強い意気込みを感じた。また、難しいと評判の採用試験もパーフェクト。私は、Kさんであれば、情熱ある稲門学舎の先生として活躍してくれると確信した。
そしてこの夏、稲門の夏期講習には、情熱的で親身に、ひとりひとりの生徒と向かい合っているK先生の姿があった。K先生が担当している生徒たちは、みな口をそろえて言う。「K先生は本当に親身で、情熱的で、どんな質問にもわかるまで何度でも解説をしてくれます。だから時間を忘れてがんばれるんです」。
私はK先生が生徒たちに教える姿を見ると、あの合宿の姿を思いだします。そして同時に、K先生の情熱と熱意で、生徒たちを志望校の合格に導いてくれることを確信しています。