『受験は楽しい?』
冬期講習も終わり、新年とともに新たな気持ちや期待を胸に抱いた生徒たちが再び元気な姿を見せてくれています。
一方で、日を追うごとに表情に余裕がなくなっていく生徒たちもちらほらと見受けられます。言わずもがな、受験生たちです。
生徒「先生、どうしよう。自信がなくなってきた・・・」
私「なに弱気なこと言ってるんだよ。大丈夫だよ」
生徒「センター試験で思うほど点が伸びなかった・・・もうだめだ」
私「まだ、あきらめるな。二次試験までまだ時間がある」
生徒「志望校、やっぱり下げようと思うんですけど・・・どう思いますか?」
私「今までずっと目指してきた学校だろ?そんなに簡単に変えていいのか?」
毎日、受験生とこんなやり取りが続きます。
新聞紙上やインターネット上で志望校の倍率が発表されると、力無げに受験校の変更を相談しに来る生徒もいます。過去問を解いてみて、前年の合格最低点に届かなかったりすると、うなだれて私のところへその報告に来る生徒もいます。中には、全身に悲壮感を漂わせて来る生徒までいます。
入試本番が間近に迫ってきたことを肌でひしひしと感じるこの時期、受験生はちょっとしたことに敏感に反応し、このような不安に陥りやすくなるものです。
そんな生徒たちの不安をよそに、私は心の中で密かにうれしく思っています。
これまでずっと目標を掲げて頑張ってきて、いよいよその実力が試される瞬間が来るわけです。怖くなったり、不安に押しつぶされそうになって当たり前です。そして、受験勉強とは、その恐怖や不安を乗り越えて、ここまで培ってきた自分の実力を試験会場で存分に発揮することができて、ようやくそこで完了するのです。そこまでできれば、あとは合否の結果をただ待つだけです。
さらに、受験勉強を通して“自信”と“不安”の繰り返しを経験し、それでも懸命に目標に向かって努力してきた者は、最終的に合否の結果以上の“成果”を手にするのです。
それは、『成長』という大きな成果です。
私は、自信と不安の狭間で苦しみ、それでも逃げ出さずに前に向かっていこうとする生徒たちのその“成長ぶり”が何よりもうれしいのです。
そして、そんな生徒たちを入試会場に送り出す時、私は毎年必ず同じフレーズを口にします。
「入試を、楽しんでおいで」と。
繰り返しになりますが、入試とはいよいよ自分の力が試される瞬間です。
緊張で、ガチガチに硬くなってしまっては、本来の力が出せません。
本番で自分の力を120%出し切るためには、少しの緊張と、その瞬間を“楽しむ”くらいの心のゆとりが必要です。
「楽しむ余裕なんて、ないですよー」
と毎年生徒に言い返されますが、それでも私は今年も同じフレーズを受験生全員に送りたいと思っています。
「入試を、楽しんでおいで」