『おなじ景色/おなじ目線(2017年1月号)』

『おなじ景色/おなじ目線(2017年1月号)』

例年に比べると、幾分か暖かさを感じつつ過ごしていた12月。特に、年末から元旦にかけては穏やかな天候が続きました。そのおかげもあって、心も体もしっかり充電できたような気がします。そうかと思えば、冬休みが明けてからは急激な冷え込み。風邪のウィルスが活発になってきたようで、学級閉鎖になっているクラスもあると聞きます。

以前「治療ではなく予防が大事」と、この『室長レター』で書きました。学校生活において、風邪予防でよく言われるのは、手洗い・うがい・アルコール消毒ですが、私が考えるウィルス対策で大事なことは、外出するときのマスク着用・室内の加湿(温度調節)・水分とビタミン補給です。マスク、加湿器、浄水器は、私の日常生活において三種の神器と言えます。他にも、適度な運動、充分な睡眠、栄養のある食事など、挙げればキリがないのですが、健康であるということは意識して習慣にしていかないとないとすぐダメになってしまいます。かくいう私も、年末年始にサボっていたウェイト・トレーニングを、数週間ぶりに再開したところであります。

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1月中旬の、ある日の午後。塾生のお母様が、教室に突然お見えになりました。私立高校に願書を出して学校に戻ってきたら、インフルエンザにかかってしまったと。塾を1週間ほど欠席されるとのご連絡に、わざわざ足を運んでくださいました。しばらくぶりにお会いしたものですから、年末年始に実施した冬期講習での成果など、私からも近況をご報告申し上げたのですが、お母様は「本当に、いつもありがとうございます」とあらたまった表情を浮かべていらっしゃいます。と言いますのも、受験を控えているにも関わらず、幼少期に始めたテニスをずっと続け、さらに塾にも通わせている。いわゆる二兎を追う状況に対していささか抵抗があったようなのです。勉強だけに集中したほうが良いのではないか?とこれまで何度も考えたそうです。しかしながら、私にとって両立は当然のことですから、「最後までがんばってテニスを続けてください」とお声掛けさせていただきました。

そのお母様からは、同じテニススクールに通うご友人のお話しも伺いしました。その子が通っている塾には「そんなにテニスばかりやって、何になるのですか」とおっしゃる先生もいるそうです。もちろん個人の価値観ですから、そういう考え方も一理あるかもしれません。ですが、その先生はおそらくスポーツや部活をやって、それが勉強に好影響をもたらした経験がないのではないか(あるいは、勉強だけで大成功を収めたか)と私は思うのです。自分自身の学生時代を振り返ってみると、やはり勉強と部活の文武両道(なかば、勉強は疎かになりがちでしたが…)が当たり前の環境でした。目標を設定してやり遂げる力や、自分に負荷をかけて努力すること。逆境を跳ね返すことで鍛えられたメンタル…etc. 勉学にも通じるものがたくさんありました。

 

「部活(習い事)を辞めて勉強に専念する」と言って、その後、劇的に成績が上がったというケースを、私は今までにほとんど見たことがありません。部活や習い事を辞めたことで生まれた時間を勉強に費やすのかというと、たいがいの子は怠けてしまうもの。「残ったお金を貯金にまわそう!」と言っているうちはお金が貯まらないのと同じことです。やる子は忙しいスケジュールの中でも勉強時間を確保しますし、やらない子は部活を辞めたところでさほど今までと変わらない。私のまわりにいた野球部のエースや、サッカー部の背番号10番は、たいがい成績も良かったと記憶しています。

「そんなにやって、何になるのですか」と言う人にとっては、何にもならないのだと思います。一方で「何かにつながる」という考え方を持って取り組んでいる人には、いつか必ずチャンスが訪れます。なぜなら、そういったアンテナが立っているかどうかで、まわりの景色や世界の見え方が変わるからです。

 

その傍らで、子どもと同じ景色を見るために同じ目線に立ってあげることが、私たち教師に求められていることではないでしょうか。

稲門学舎 板橋校
根本 渉

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