『再会』
高校生や大学生になった卒業生が、教室に顔を見せに来てくれることがあります。
近況を話す彼ら彼女らの姿から、ちょっと大人になった様子が窺える時はこの仕事について本当に良かったなと思える瞬間の一つです。
達者でいてくれればそれで十分と日頃私は思っているのですが、卒業生の中でも頻繁に連絡をくれる方もいます。
先日、その中の一人から電話が掛かってきました。
『頼みがあるんです。お時間頂けますか』と。
卒業生からお願い事をされることがなかなかないので、「なんだろう。聞ける頼みと聞けない頼みがあるな。出来ないものでも話を聞くことはできるな」などと考えをめぐらせてしまいました。でもよくよく聞けば、その頼みごととは大学のとあるコースへ出願するために必要な書類の相談だったのです。そのコースとは航空機のパイロット養成コース! その為の出願書類は英語で書かなければならず、その添削をしてほしいということでした。
塾にいた頃から彼の夢は飛行機のパイロットになることで、そのためにパイロット養成コースのある大学を志望して、去年見事に合格を決めました。そんな彼の頼みごとなので、快諾して日程を調整し塾に来る約束を取りました。久しぶりに顔を見せてくれた彼が出願書を書いている姿を見ていると、着実に自分の夢に近づいているように感じられると同時に、英語の授業をしていた当時を思い出しました。近況を伺うと、彼はいまでも教わっていた先生と連絡を取り合い、時には悩み事を相談しているとのことでした。彼を力づけられる“場”を少なからず提供できていることにちょっと誇らしい気持ちになりました。
自分の夢が具体的に見えている生徒は少数だと思います。「自分の夢が何なのかまだ分からないよ」という方もいます。どうすれば夢を持てるのか、難しい課題です。パイロット志望の彼にきっかけを聞いてみました。「昔見たテレビドラマで憧れて…」と、少し恥ずかしそうに答えてくれました。夢の端緒はそう難しいことではありません。あとはその実現に向けてどう自分を力づけていくのか。むしろこっちが難しいのですが、私の仕事はそのアシストをすることだと改めて気づかされたのでした。